(新)後藤仁のスロー・クルージング
軍事関係図書(洋書中心。自腹で購入!)の書評と日々の雑感
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ファントムFG.1のトリビア
 今日20日は昨日より少し涼しく、まあ窓を全開で耐えられる。これは財布にはありがたいことだ。仕事もなくやることもないので、こうして昼からブログを書いている次第。

SeketsuFG.1-FGR.2  さて今回は、世界の傑作機最新刊の「スペイ・ファントム」で少々気になった点があったので、少し調べてみた。それはスタビレーターの下反角が0.1度F-4Jとは異なり少ないという部分と、AIM-7もしくはスカイフラッシュ装着用のSta.No.4/6への約195kgのダミーウエイト弾装着の部分だ。

 まずスタビレーターの下反角の相違だが、これは海軍型ファントムFG.1が離艦に際し、甲板長の短いイギリス空母ゆえの装備である2段式前脚延長オレオにより機体の迎角が増大ことを受け、スタビレーター端が甲板と接触することを避けるもので、昔から言われてきたことだ。

 しかし考えてほしい。0.1度の差など取付け許容範囲の極めて小さい数字であり、そのために様々な部品を変更することによるコストの上昇を考えると、まずあり得ない話であろう。実際イギリス型F-4最良の資料である「BRITISH PHANTOM」では、F-4Jと同じ23度15分と記述されている。まずこの数字が正しいと考えるほうが、はるかに妥当だと思う。

 この0.1度下反角が少ないという記述は、ジェーン航空機年鑑にでも掲載されていたかと思うのだが、何しろ自分は持っていないのでそれを確かめることはできない。ただしジェーン年鑑でも間違いは結構多く、そのまま鵜呑みにすることはできないというのがオヤジの見解だ。

 またSt.No.4/6へのダミーウエイト弾に関しては、オリジナルのJ79エンジンの乾燥重量1,750kgに対して、スペイ201エンジンが1,850kgと100kgほど重く、機体の重心バランス整合のために装着したとされているのだが、果たしてこれは本当だろうか。なおエンジンの型式により重量は若干異なるが、ここではこの程度と考えられたい。

LastOfPhantoms そう聞くとなるほどなと考えそうだが、ちょっと待ってほしい。イギリス海軍向けの生産型FG.1の自量は14,023kgとされており、エンジンとの重量比は12%強。これに対して原型であるF-4Jは13,847kgで、やはり12%強と機体とエンジンの重量比はほぼ同一の値を示している。

 だったらアメリカ海軍もダミー弾を必要とするのではと考えるかも知れないが、もちろん訓練弾はあっても、そんなものはアメリカ海軍にはない。もちろん海兵隊にもだ。なぜイギリス仕様だけ必要とするのだろうか。それ自体がおかしいことだろう。

 しかもファントムFG.1は、発艦に際して機首の迎角を大きくとるためさらに後方への重量課題を招くことになるのだが、数多い発艦時の写真を見ればわかるように、そんなものを装着している例はないのだ。

 さらに今回前述の本に加えて、フローム・ザ・コクピットシリーズやファントム スピリット・オブ・ザ・スカイ、F-4Jフライトマニュアル、そしてファントムFG.1の機付長ハンドブックと乗員ハンドブックも見てみたが、そのような記述はどこにもなかった。

 このダミー弾装着は昔から言われてきたことなのだが、今回の精査でそれを裏付けるものはなく、古い誤りがそのまま綿々と引き継がれてきたと考えるのが妥当ではなかろうか。

 なによりもイギリス仕様は、新規に機体を製作しているので、生産時に何らかの形でバランスを整えるほうが、空対空ミサイルのステーションを2基占有し、単なる錘りとしての役しか立たないものを装着すると考えるほうがおかしいと思うぞ。というわけで、これらは『ファントム都市伝説』の一つとオヤジはしたい。






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拙ブログ記事の…
フォローありがとうございます。

長らくの『都市伝説』ですが、すでに結論が出ていることが蒸し返された感じで何とも…ですね。文林堂も結構人騒がせ…。『F-14の爆砕コード』然り、『A-1の胴体延長』然り(そういや改訂版のA-1も数値上はまだH/Jは伸びたままでしたね)。
世傑に書いて有ることは単独では信用できないのでクロスチェックは必須です。
2017/08/21(月) 13:21:58 | URL | 楠木 #- [ 編集 ]
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